はじめに

「日曜日に子どもが熱を出したが、どの病院も開いていない…」そんな経験はありませんか?現在、鹿児島県では休日の当番医不足が深刻な問題となっています。その背景には、医師の高齢化と地域間の医師偏在が存在します。


医師の高齢化と地域格差

医師の35%が60歳以上:鹿児島県の医療現場の現状

鹿児島県内の医師の約35%が60歳以上であり、特に開業医の高齢化が進行しています。2007年には68人いた小児科開業医が、現在では49人まで減少し、平均年齢は66歳に達しています。このような高齢化は、医療提供体制の維持に大きな影響を及ぼしています。

さらに、鹿児島市や鹿屋市などの主要都市には医療資源が集中している一方、離島や山間部では医師不足が深刻です。例えば、奄美群島や種子島、屋久島などでは、医師数が著しく少なく、医療格差が生じています(出典:鹿児島県医療計画)。


休日当番医不足の実情

現場で何が起きているのか

鹿児島市の小児科では、休日に1人の医師が180人以上の患者を診察することもあります。このような状況では、医師の負担が限界を超え、医療の質の低下や医師の疲弊が懸念されます。

また、医療の専門分化が進む中、専門外の診療を避ける医師も増えており、患者が適切な診療を受けられないケースも報告されています。医師の高齢化に伴い、休日や夜間の勤務を避ける傾向も強まり、医療提供体制の維持が難しくなっています。


救急病院の偏在と搬送課題

鹿児島県内の救急病院の現状

鹿児島県内には約40の救急指定病院がありますが、その分布には偏りがあります。主要都市には複数の救急病院が集中している一方、離島や山間部では救急対応可能な病院が限られています(出典:鹿児島県医療計画)。このため、重症患者の搬送時間が長くなり、患者の容体悪化のリスクが高まることが懸念されています。


救命救急センターの現状と取り組み

成功事例と課題

鹿児島県内には3つの救命救急センターがあり、重篤な患者を24時間体制で受け入れています。これらのセンターは、人員不足や過重労働といった課題を抱えつつも、以下のような取り組みを行っています。

  • オンライン診療の活用:離島地域の患者に対して遠隔診療を行い、搬送の必要性を迅速に判断するシステムを導入。
  • ドクターヘリの活用:ドクターヘリによる搬送体制を強化し、離島や山間部からの重症患者の搬送時間を短縮。
  • 地域医療機関との連携:地域の中核病院とのオンラインカンファレンスを定期的に実施し、患者情報を共有してスムーズな受け入れを実現。

これらの取り組みにより、救命救急センターは地域医療全体の連携を強化し、救急医療体制の維持に努めています。


進行中の対策と効果

鹿児島県の取り組みと成果

鹿児島県では、医師不足や医師の高齢化、地域間の医師偏在といった課題に対して、以下のような対策を進めています。

  1. 広域医療センターの設置:地域をまたいで医療機関が連携し、当番医不足を補完。
  2. オンライン診療の活用:離島地域の軽症患者に遠隔診療を行い、不必要な搬送を削減。
  3. 地域医療支援センター:医師の派遣や研修支援を強化し、若手医師の地域定着を促進。
  4. 医師の働き方改革:時間外労働の適正化やタスクシフトを進め、医療従事者の負担を軽減。
  5. 医学生への奨学金制度:地域枠での医学生を増やし、地元での就職を促進。

これらの取り組みにより、医療提供体制の維持と改善が図られています。


おわりに

医師の高齢化による休日当番医不足は、鹿児島県だけでなく全国的な課題でもあります。しかし、地域全体で医療を支える意識を持つことで、解決の糸口は見えてくるでしょう。

医療は「提供する側」と「受ける側」の協力で成り立つもの。「自分には関係ない」と思わず、身近な医療の現状に目を向けてみませんか?

地域医療を守る一歩は、あなたの意識から始まります。